6年で売上7.1倍の急成長企業、M&Aキャピタルパートナーズの強み、採用方法、年収などを徹底解剖(日本M&Aセンターとの比較あり)
M&AキャピタルパートナーズというM&A仲介会社をご存知だろうか。ビジネスパーソンや就活中の学生であれば一度は耳にしたことがあるであろう会社だ。2015年10月に設立して以来順調に成長を続け、2020年9月期段階で売上高118億、経常利益約50億、経常利益率42.5%を誇る超高収益企業である。
今回は同社のビジネスモデルや成長を続けている要因、他M&A会社との違いなどを深掘りしていきたい。
目次
M&Aキャピタルパートナーズとは
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社は、中堅・中小企業のM&A仲介業務を得意とする東証一部上場の大手M&A仲介会社である。2020年9月期通期決算で売上高約120億、経常利益約50億、成約件数約140件で、2021年9月期の見込みはコロナの影響もあり売上高約140億、経常利益約60億。
新規上場の申請期(2013 年 9 月期)から、7年で10倍超の売上達成の予定で、社員数は連結197名、単体で125名 (2020年12月31日現在)である。
参照元:平均年収ランキング
度々話題となる年収ランキングでは平均2,000万円以上、最新結果では3,100万円以上で、かの有名なキーエンスを差し置いてここ数年第1位を取り続けている。現代表で創業者の中村悟氏は、新卒で積水ハウスに入社し、その後2005年10月にキャピタルパートナーズを設立。創業の経緯については、中村氏は同社の設立の経緯を以下のように語っている。
積水ハウスで地主さんの相続対策や資産運用を手掛けるなかでM&Aを勉強しました。大きな不動産を動かしているという自負はありましたが、M&Aの世界を知り、ぜひこの仕事をしたいと思いました。M&A仲介会社への転職を考えましたが、経験者でないと採用されづらいため独立しました。ただ、知名度や信用が大事な業態なので、創業当初は仕事を任せてもらえませんでした2期目(07年9月期)と3期目の終わりに倒産寸前までいきました。個人保証をしていたので自己破産を想像しました。週刊エコノミスト
直近の業績
同社の決算期は9月であり、今回の決算発表は第1四半期を終えての業績と通期での業績予想である。今回、第1四半期期間は売上高が約40億(通期進捗率28.3%)、経常利益は約18億(通期進捗率29.2%)。第1四半期を終え通期予想は売上高140億(前期比+18%)、経常利益は約62億(前期比+23%)という状況である。
受託案件数(単体)は、過去最高の 347 件(前年同期比+26.6%)となり、第1四半期は特に大型案件8件の成約 (前年同期比+700.0%)があり、過去最高の売上高となった。また、受注残の参考指標となる前受金も、 約5億(前年同期比+10.7%)と順調に積みあがている。
コスト構造
参照元:2020年9月有価証券報告書
同業界は商品原価のない労働集約型ビジネスのため、コストとしては人件費が中心になるが、それに加えて案件紹介料や外注費の割合が大きいのが特徴だ。金融機関や税理士、銀行など提携している先から紹介された見込み顧客との取引が成立すると、バックマージン(手数料)を支払う。
また営業活動がメインであるため、アクセス面や採用面を考慮し一等地に事業所を構えているため地代家賃が高いのも特徴だ。広告宣伝費については、日本M&Aセンターの直近の売上に対する広告費は約2%であるのに対して、同社は倍の約4%でCMなどの印象の通り、広告宣伝には力を入れている。
ビジネスモデル
同社はM&A仲介事業を主の事業としている。譲渡企業、譲受企業の間に立ち、株式譲渡の仲介を行うことで、その手数料を収益としている。独立・中立的な立場から、譲渡企業(売り手)・譲受企業(買い手)の間に立ち、M&Aの成立に向けたアドバイザリー業務を提供。
特徴と優位性
同社の特徴、優位性に関しては以下4つがあり、それぞれについてみていきたい。
・顧客納得性が高い手数料体系
・広い顧客ネットワーク
・経験豊富な人材の採用
顧客納得性の高い手数料体系
同社の最大の特徴の一つとしてその料金体系がある。M&A仲介会社の手数料は、基本的に「手数料=着手金+企業価値算定+月額報酬+中間報酬+成果報酬」で算出される。しかしながら同社は成功報酬体系を採用しており、相手方の企業をマッチング、基本合意がなされた際の中間報酬まで手数料がかからない。
手数料に関しては、株式価額ベースの手数料を採用しており、一般的なレーマン方式(取引金額に一定の料率を乗じて算出)と比較して移動総資産ベースと比べて納得性が高い。また、一般的なM&A仲介業社は、税理士や金融機関などからM&Aを検討しているオーナーを紹介するケースが多く、紹介料としての中間コストが手数料に反映される。
一方、同社では、直接オーナーとの取引を開始するケースが多く、中間コストが発生しないため、着手金の負担が顧客にかからない料金体系を実現させている。それゆえ、株式譲渡にかかる費用が少額で済むことから、譲渡側、譲受側問わず顧客数を伸ばしていることが、同社の業績拡大の要素となっている。
広大な顧客ネットワーク
参照元:株式会社レコフ及び株式会社レコフデータとの経営統合について
同社は2016年10月に株式会社レフコ及び株式会社レコフデータと経営統合を行った。レコフは、1987年設立の日本で一番古いM&A仲介会社とされ、M&Aの戦略立案から案件創出・実行など、M&Aを実現するためのサービスを提供する企業。
日本にまだM&Aという言葉のなかった時代から、30年以上にわたって大手企業経営陣に提案を続け、M&A市場を発展させたレコフとの経営統合には、同社にとって大きく以下のメリットがあり、顧客基盤の拡大に大きく寄与した。
・約2万社の顧客基盤
・金融機関への幅広いネットワーク
・M&Aに関する膨大な蓄積データ
経験豊富な人材の採用
参照元:2020年9月有価証券報告書
同社では、新卒採用を行っていないというのも大きな特徴だろう。採用活動においては、金融業界での営業経験のある人材のみを採用しており、コンサルタントのレベルには注力をしている。先述のとおり平均給与の高さも同社の特徴であり、2020年9月期の有価証券報告書では、従業員の平均年収は約2,270万円である。
同業の日本M&Aセンターの従業員の平均年収は2020年3月期の有価証券報告書によると約1,353万円であるため、同社の水準の高さが伺える。それだけ優秀な人材の採用に注力しているということである。
他社比較(各指標)
社名 | 優先市場 | 時価総額 | 売上高 | 営業利益率 | 社一人当たり売上 | 上場年数 |
---|---|---|---|---|---|---|
日本M&Aセンター | 東証1 | 1,039,160 | 32,009 | 44.5 | 54 | 14 |
M&Aキャピタルパートナーズ | 東証1 | 158,564 | 11,871 | 42.6 | 59 | 7 |
ストライク | 東証1 | 90,648 | 6,916 | 43.1 | 49 | 4 |
今後の成長戦略
同社はこれまで平均年20%の成約件数の増加を行ってきた。今後もキャピタルパートナーズで平均年20%増、レコフで平均年10%増を堅持していく計画だ。また金融機関での営業経験のある即戦力人材の採用を継続して注力することによって、より多くの案件獲得を図る計画だ。
一方で同社はテレビCMやウェブマーケティングや広告などを活用した反響型営業にも注力していく予定だ。
M&Aキャピタルパートナーズといえば、ライオン社長のCMは誰しもが一度は目にしたことがあるのではないか。「ワールドビジネスサテライト」「報道特集」の番組内にて、計6パターンのCM放映を行い、引き続きプロモーション活動に注力する。
同CMのライオン社長は、会社の未来に悩むオーナー社長の姿を百獣の王であるライオンになぞらえたものだ。
社員を率いながら重大な決断に常に一人で立ち向かう社長の姿は、ライオンが群れを率いながら常に一人で周囲に目を凝らし、あらゆる事態に備えて責任を負う姿をイメージしているという。
更に同社はみずほ銀行との業務提携契約を締結し、顧客の事業承継ニーズへの支援を強化。特に中小企業を中心とした後継者不在の企業が抱える事業承継ニーズは高まりを見せている中で、みずほ銀行は5ヵ年経営計画の重点戦略である円滑な承継ニーズへの対応に向けてグループ一体で取り組んでいる。
今回の業務提携により、みずほ銀行の有する国内の強固な法人顧客基盤と、キャピタルパートナーズが有する中小企業向けM&Aに関するソリューション力の相互連携・活用を進める。更に地方銀行・税理士・会計士・証券会社との連携を強化し、今後拡大・多様化が見込まれる中小企業の承継ニーズに対してのサービス推進をしていく方針だ。
総括
中小企業の引退平均年齢が約70歳と言われている中、現在の中小企業経営者の年齢ボリュームゾーンは66歳ということもあり、この5年の間に多くの中小企業において事業承継あるいは廃業が行われる可能性が高いと考えられている。
特に後継者不在の問題が大きく、仕方なく廃業を選ぶ経営者も年々増加傾向にあり、M&Aによる事業承継も大きな注目を集めており、実際に年々M&A市場としても拡大傾向にある。今後の日本経済の存続の大きな支えとなる同社の活躍には今後も継続をして注目していきたい。