現役最年少上場社長が率いるBranding Engineerのビジネスモデル、強み、評判などを徹底解剖

Branding Engineer(ブランディングエンジニア)

昨今、ITに関わる仕事が非常に多くなりコロナをきっかけに働く環境や仕事への取り組み方含めた働き方が見直されている中、特にフリーランスや副業という言葉を多く耳にするようになった。

ここ最近、特にエンジニアを養成するスクールやITエンジニアの独立支援をする会社が多く台頭してきている。そこで今回は、その領域におていも数少ない上場を果たし、更に現役の上場企業社長の中では最年少の社長が率いるBranding Engineerという会社を紐解いていく。

Branding Engineerとは

株式会社Branding Engineerは2013年に設立、東京都渋谷区に本社を構え、社員数約165名(2020年8月31日時点)の会社である。元々幼馴染で同級生の現代表取締役CEO河端保志氏と現代表取締役COO高原克弥のダブル代表取締役体制で、当時はまだ珍しかった学生起業で資本金は10万円でのスタートだった。

2人はエンジニア出身ということもあり、初めは受託開発の事業のみであったが、2015年に現在の主力事業の一つであるITエンジニアに特化した転職支援サービス「TechStars」を開始。

翌年には同じく現在の主力事業であるITエンジニアの独立支援サービス「Midworks」をリリース。その後、創業からわずか7年弱の2020年7月7日に東証マザーズ市場に上場を果たしている。
 

直近の業績

参照元:2020年8月期決算説明資料

参照元:2020年8月期決算説明資料

直近の業績は、上の図の通り創業以来7期連続増収を達成し、今期売上高は約31億(前期比+110.3%)、営業利益は約1億(前期比+70.8%)と右肩上がりに順調に推移している。販管費については、2021年8月期以降の業容拡大に備え人材基盤を整備するために投資を行った背景で多少コストが膨らんでいる。

セグメント別売上・利益

参照元:2020年8月期決算説明資料

上の図の通り、売上高比率がかなり小さい「その他事業」を除いて、同社には大きく4つの事業があり、ここではその4つの事業についてそれぞれの売上利益をみていく。

Midworks事業については、売上高約24億(前期比114.7%)、営業利益約1.7億(前期比105.3%)であり、全体売上高に占める割合も約77%とかなりの割合。メディア事業については、売上高が約3億(前期比101.3%)、営業利益約1.4億(前期比89.8%)。tech boost事業については、売上高約2.5億(前期比192.1%)、営業利益約9,000万(前期比293.9%)。FCS事業については、売上高約1億(前期比41.8%)、営業利益約4,600万(前期比33.1%)。



具体的な事業内容とビジネスモデル

先ほど簡単にご紹介したように、同社には大きく以下4つの事業があり、ここでは具体的に各事業のサービス内容とビジネスモデルをみていく。

Midworks事業

参照元:有価証券報告書

Midworks事業では、同社が社員として雇用しているエンジニアはもちろん、フリーランスエンジニアや外部協力企業のエンジニアをエンジニア不足に困っている企業のマッチングを主に行い、エンジニアを外部企業に常駐させるSES事業と派遣契約に基づく派遣事業を行っている。

同時に、フリーランスエンジニアについては、独立の際に不安材料として挙がる収入や各種保障、経費面などをサポートすることで独立に向けた支援も行っている。フリーランスの働き方を実現しながらも、正社員並みの収入や保障などを整えたものだ。

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メディア事業

参照元:有価証券報告書

メディア事業では、IT人材のためのキャリアライフスタイルマガジンと題して、ITエンジニア向けのメディアである「Mayonez」と、ビジネスパーソン向けの「Tap-biz」をそれぞれ展開している。

これらのメディアを通じて、記事の閲覧履歴やユーザーが登録した興味関心のあるカテゴリーといった独自の蓄積データを活用することで、広告主にとって効果の高い広告配信ができるアドネットワーク広告により広告収入を得ている。

また、2つのメディア運営を効率的に行うために、CMSを独自で開発し、このCMSをメディア運営ニーズのある会社に提供することで、そのシステム利用料に加え導入・運用に関わるコンサルティングフィーを得ている。

更にはそこからITエンジニアやこれからITエンジニアを目指す方との接点を持つことで、自社で展開しているその他サービスの顧客獲得におけるひとつのチャネルを担っている形だ。

tech boost事業

参照元:有価証券報告書

tech boost事業は、昨今youtubeなどで話題になっているマコなり社長が展開しているプログラミングスクールと同様の事業であり、これからITエンジニアを目指す方向けにプログラミング教育のサービスを提供している。

学べる内容としては、基本的なWeb開発言語からAI・IoT、ブロックチェーンといった最先端の技術まで、受講者の経験値やこれから目指すステージに応じた幅広い学習機会を独自のカリキュラムである。従来のオフラインで通うスクールとは違い、現役エンジニア講師によるマンツーマンでのコーチング制を基本的にはオンラインで完結できる内容になっている。

今後は法人向けのサービス展開を計画しており、更なる事業拡大を図る予定だ。実はここの法人開拓は、同業含めた多くの企業が苦戦をしており、Branding Engineerが今後どのような形で開拓を進めていくのかは、注目すべきポイントだろう。

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FCS事業

参照元:有価証券報告書

FCS事業では、一般的に多くの同業会社が行っている、開発リソースが不足している企業の案件を受ける受託開発事業と、同社の特徴である、今後自社内でエンジニアリング部門の立ち上げを行う予定の企業に対してエンジニア人員の採用からチーム組成まで一貫したコンサルティングサービスの提供している。

これは、同社が自社でメディア運営を行ったり、多くのエンジニアとの接点をもてる機会があったりするなかで、エンジニアの求めるニーズを把握でき、これからエンジニアを目指す方がどのような人なのかも把握しているため、IT人材の採用に苦労する企業に対してはその知見をいかしたサービス提供が可能となっている。

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特徴と優位性

同社の特徴、優位性に関しては以下3つが挙げられるので、それぞれみていく。

・IT エンジニアのキャリアや福利厚生をワンストップで自社で網羅して支援可能な運営体制
・これまで培ったITエンジニアの募集・獲得、メディア運営ノウハウのコンサル力
・主力のMidworks事業におけるITエンジニアへの安定した就業体制の提供

ワンストップな運営体制

参照元:有価証券報告書

先ほどご紹介した通り、同社は大きく4つの事業を展開しており、上の図はこれらすべてを統合したものを表している。それぞれの事業は独立して成り立っているというよりも、互いに補完、連携し合える部分も多くあり、多くの会社が簡単には真似できないワンストップな体制を構築している。

また、創業者がともにエンジニア出身ということもあり、周囲にもエンジニアが多く、エンジニアの困っている声を拾うことができる。例えば、エンジニアがフリーランスになる場合、税務や確定申告などバックオフィスの不安が多く、そのためのバックオフィス支援のパッケージを導入し、freeeとの提携も進めている。

更に、大企業に勤めているエンジニアの配偶者が、保養所などを利用できなくなるのが困るといったケースもあり、そのための福利厚生サービスの提供も行っている。

ITエンジニアの獲得、メディア運営のノウハウ

同社のメディア事業では、ITエンジニア向けのメディアである「Mayonez」や、ビジネスパーソン向けの「Tap-biz」を展開しており、業界では同社はユーザー獲得がうまい会社として知られている。

そのため、ユーザー獲得はもちろん、自社でこれまで行ってきたオウンドメディアの運営のノウハウやそのメディアを通じたエンジニアの集客・獲得のノウハウがあり、それを外部企業にコンサルティングサービスとして提供している。

一般的な企業の場合、SEO対策として特定のキーワードに対して広告を出すが、同社の場合はメディアを閲覧するユーザーに対してリターゲティング広告を表示することが可能なのだ。

そのため半数近くのユーザーがメディアを通じて接点をもつことができ、具体的な獲得コストに関しても良い時には他社の半額ほどで獲得できるようだ。また、メディア運営におけるCMS(コンテンツ管理システム)も自社開発しており、これらも事業運営に役立てている。

ITエンジニアへの安定した就業体制の提供

創業時からの主力事業としてMidworks事業を展開しており、ITエンジニアとしてSESや派遣という形で企業とのマッチングを行い、自身で独立して働きたいエンジニア向けには、収入や経費、保障などの不安材料を最小化した形での独立支援も行っている。

また、これからITエンジニアを目指す方には、プログラミング教育を提供するサービスであるtech boost事業を展開している。ここでは同社がこれまで蓄積してきたデータなどをもとに独自のカリキュラム開発やオンラインでの学習に加え、現役エンジニアによるマンツーマンでの教育体制なども確立している。
 

今後の成長戦略

同社の今後の成長戦略としては、既存事業に関して大きく2つ、新たな取り組みとしての戦略が1つがある。それぞれ順番にみていこう。

まず、主力事業であるMidworks事業については、今後更に社員エンジニア、フリーランスエンジニアの獲得に注力し、より多くの企業の開発ニーズを満たせるような最適なITリソースの提供を行う。また、tech boost事業やTechstars事業との連携を強めることで、ITエンジニアの間口を広げ、潜在求職者に対してもアプローチを行うことで、更なるエンジニアサービスの拡充を図る計画だ。

次に、メディア事業について、ユーザーのニーズにあった記事コンテンツの拡充とGoogle検索での上位表示をさせるためのSEO対策の強化を行うことで、より多くのユーザーを集客し、広告収益を拡大する計画。また、それらの運営の中で得たノウハウをいかしたコンサルティングサービスの提供も強化する計画だ。

そして、新たな取り組みとしては、既存事業エリアの拡張による事業規模の拡大及び既存事業領域の拡大、更にオンラインサービスや蓄積したデータをいかした新規事業の創出である。

総括

個人的には事業内容はもちろん、2人の共同創業者が当時はまだ珍しかった学生起業をする際に、「学生起業なんて成功しない」「どうせすぐ潰れる」「1社働いてから起業するべき」などと色々な意見を言われていた中、最終的には「ワクワクすることやろう」ということで内定を辞退し、事業が始まったというストーリーが非常に印象深かった。

昨今、人がチャレンジすることに対する色々な意見が飛び交う中で、それを気にせず自身の考えに基づいて決断をすることは難しくなってきているように思う。

このようなストーリーは皆に勇気を与えられるような存在であると思うし、同社が提供しているサービス以外の部分での別の価値、魅力があるのではないかと思うので、そういった意味ではこれからITエンジニアになろうとされる方にとっては頼りになる存在ではないだろうか。