ASMRが気持ち悪いのはなぜ?咀嚼音に対する不快感とは?
本記事ではASMRや咀嚼音に対する感じ方について解説します。人によって感じ方は様々ですが、なぜそのような個人差があるのかどうか、良いと感じ方、不快と感じ方で何が違うのかを解説します。
目次
ASMR・咀嚼音が気持ち悪いと感じる理由
すべての人がASMRに対して同じ反応を示すわけではなく、ある人々にはASMRが心地良いと感じる一方で、別の人々には気持ち悪いと感じることがあります。
ここではタイトルの結論的な内容をお伝えします。
関連:https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/advpub/0/advpub_NSKKK-D-23-00089/_article/-char/ja/
ASMRとは何か?
ASMR(エー・エス・エム・アール)とは、聴覚や視覚、触覚などの刺激によって、心地よい感覚や幸福感、リラックス感などを感じる現象です。
頭や背中、首などの部位に「ゾワゾワ」とした感覚が走る、といった表現がよくされます。ASMRの刺激には、以下のようなものが挙げられます。
- ささやき声
- 耳かき
- 咀嚼音
- 指先でなぞる音
- 紙をめくる音
- 水音
- 風音
- 自然音
ASMRは、脳の聴覚皮質と視覚皮質が刺激されることで、α波やθ波などの脳波が活発になることが研究でわかっています。
α波はリラックス状態、θ波は深い眠りに入る前の状態の脳波です。そのため、ASMRによってリラックス効果や睡眠効果が期待できると考えられています。
ASMRがなぜ気持ち悪く感じられるのか
以下の3つの観点があるかと思います。
- 個人の感じ方の違い:人によって感覚の受け取り方や好みは大きく異なります。これは音楽や食べ物の好みなど、さまざまな分野で見られる現象です。
- 神経学的反応:ASMRが感じられる人と感じられない人の間で脳の反応に違いが存在することが研究で示されています。感じられない人や逆に不快に感じる人は、ASMRの音に対して特定の脳領域が活発にならない、もしくは異なる方法で反応している可能性があります。
- 文化や背景の違い:例えば、ある文化圏では囁き声が信頼や親しみを感じるきっかけとなる一方、別の文化圏ではプライバシーの侵害と感じることがあります。
残念ながら、特定の国や公共団体からの客観的なデータや統計データは2022年の時点では十分に提供されていません。
しかし、多くの個人の体験やアンケート結果から、ASMRの反応は個人差が大きいことが示唆されています。
例えば、ASMRコンテンツのコメント欄やフォーラムでは、リスナーから「この音がとてもリラックスする」という意見と共に、「私には逆効果で不快に感じる」という意見もしばしば見られます。
ASMRアーティストが多様な音を試みる中、一部のリスナーからは特定の音(例:マウスの音、囁き声、タッピング音)に対する不快感を示すフィードバックが寄せられることがあります。
このようにASMRは個人の感じ方や文化、神経学的な反応など様々な要因によって異なる反応をもたらします。
そのため、一部の人々には気持ち悪いと感じられることがあるのは自然な現象です。感じ方は個人差が大きく、全ての人に合うわけではありません。ASMRを楽しむも楽しまないも、どちらも正当です。
個人差が生じる原因
ASMRに対する感じ方には大きな個人差があり、この差は神経学的、心理的、文化的要因など多岐にわたる原因に起因しています。それぞれ簡単に説明します。
神経学的要因:一部の研究によれば、ASMRを感じる人の脳は特定の音や刺激に対して異なる反応を示すことが示唆されています。これは、感じる人の脳の構造や機能が、感じない人とは異なる可能性があることを意味します。
心理的要因:個人の過去の経験や感じ方の基準、メンタルヘルスの状態なども、ASMRの反応に影響を与える要素として考えられます。
文化的要因:文化や育った環境は、音やタッチに対する感じ方を形成する要素となります。例えば、一部の文化や環境でよく経験する音は、その文化や環境になじみのない人には不快に感じる可能性があります。
このようにASMRに対する感じ方の個人差は、神経学的要因、心理的背景、文化的な要因など、さまざまな原因に起因しています。
これらの要因は複雑に絡み合い、それぞれの人のASMR体験を形成しています。このような個人差を理解し、尊重することは、ASMRコミュニティにとって大切です。
咀嚼音が不快に感じる理由
咀嚼音とは
咀嚼音とは、食事をするとき、歯と歯の間や歯と食べ物の間に生じる音のことです。具体的には、歯がぶつかる音、食べ物が歯で砕ける音、食べ物が舌で転がる音などが挙げられます。
咀嚼音に対する不快感の原因
咀嚼音が不快に感じる人々は多く、この感じ方は神経学的、心理的、社会文化的な要因に起因する可能性が考えられます。
- 神経学的要因: 「ミソフォニア」という状態は、特定の音、特に咀嚼音やタイピング音などに過度な不快感や怒りを感じる状態として知られています。この状態の背景には脳の特定の領域の過敏な反応が関与しているとされています。
- 心理的要因: ある人々は、食事中の音に敏感であるか、それに関連する過去の経験やトラウマにより、咀嚼音に対して特別な反応を示すことがあります。
- 社会文化的要因: 一部の文化や環境では、公然と食事の音を立てることは礼儀として避けるべきとされており、このような背景を持つ人々は咀嚼音を不快に感じやすいかもしれません。
2022年の時点で、ミソフォニアに関する研究はまだ進行中ですが、この状態を持つ人々が特定の音に対して強い不快感を示すことは、多くの専門家や研究者によって認識されています。
以下に一例をご紹介します。
- ミソフォニアを持つ人々は、咀嚼音やペンのクリック音、足音などの日常的な音に強い不快感を示すことが報告されています。
- 一部の国や地域では、食事時に音を立てることはマナー違反と見なされており、そういった文化の影響を受けた人々は咀嚼音を特に不快に感じることがあります。
このように咀嚼音を不快に感じる理由は、人それぞれ異なりますが、神経学的、心理的、社会文化的な要因が関与していることが考えられます。
特に、ミソフォニアという状態は咀嚼音を非常に不快に感じる一因として知られており、このような音に敏感に反応する人々の感じ方を理解し、尊重することが必要です。
不快感を感じやすい人の特徴
咀嚼音に不快感を感じやすい人の特徴は、以下のとおりです。
- 感覚過敏がある人
感覚過敏とは、音や光、匂いなどの外部からの刺激に対して過剰に反応してしまう状態です。咀嚼音は、音の一種であるため、感覚過敏がある人は、通常よりも大きな音や不快な音として感じてしまう可能性があります。
- ストレスや不安を感じている人
ストレスや不安を感じていると、周囲の音に敏感になり、小さな音でも不快に感じてしまうことがあります。そのため、咀嚼音に対しても不快感を感じる可能性があります。
- 潔癖症の人
潔癖症の人は、口や食べ物に関することに敏感な傾向があります。そのため、咀嚼音を不潔な行為として捉え、不快に感じてしまう可能性があります。
- 食事マナーを重視する人
食事マナーを重視する人は、咀嚼音をマナー違反として捉え、不快に感じてしまう可能性があります。
また、咀嚼音に不快感を感じるかどうかは、個人差があります。音の大きさや音質、咀嚼する人の顔つきや表情などによっても、感じ方が異なるようです。
ASMRに対する個々の反応
快感を得られる人の特徴
ASMRの快感を得られる人々は、脳の特定の領域に反応を示すことが多く、リラックスや安心感を求める傾向があります。
- 神経学的要因: 一部の研究では、ASMRの快感を得られる人々の脳は、特定の音や刺激に対して異なる反応を示すことが確認されています。
- 心理的要因: 快感を得る人々は、日常生活のストレスや不安を軽減する手段としてASMRを活用していることが考えられます。
研究によれば、ASMRの快感を感じる人々は、脳の特定の領域(例: 前帯状回や腹側前頭前野)に活動が集中する傾向があると報告されています。
不快感を得られる人の特徴
ASMRを不快に感じる人々は、特定の音に対する過敏な反応や、文化的・心理的背景に起因する可能性が考えられます。
- 神経学的要因: 「ミソフォニア」のように、特定の音に過度な不快感を示す状態が関連している可能性があります。
- 心理的・文化的要因: 一部の人々は、育った環境や文化、過去の経験から特定の音を不快に感じる傾向がある。
研究によれば、一部の人々は、食事の音や囁き声を特に不快に感じることが報告されています。
中立的な反応をする人の特徴
ASMRに中立的な反応をする人々は、特定の音に対する強い感情的反応が少ないと考えられます。
- 神経学的要因: これらの人々の脳は、ASMRの刺激に対して特定の反応を示さないことが考えられます。
- 心理的要因: 特定の音に対する特別な過去の経験や印象がないため、中立的な反応を示す可能性がある。
研究によれば、多くの人々がASMRの動画を初めて見た際に、特に強い感情的反応を示さないことが報告されています。
ASMRの具体的な効果とは
ここではASMRがもたらす効果に関して解説します。
ASMRのストレスリリーフ効果
ASMRは多くの人々にストレスリリーフ効果をもたらすとされており、この効果は脳の反応やリラックスホルモンの分泌に関連している可能性があります。
- 神経学的要因: ASMRの快感を感じる人々の脳スキャンを調べた研究によれば、リラックスや安心感に関連する脳の領域が活性化していることが示されています。
- 生物学的要因: ASMRの刺激によって、リラックスホルモンとして知られるオキシトシンの分泌が促される可能性が指摘されています。
- 心理学的要因: ASMRの刺激は、一時的に日常のストレスや悩みからの脱却を助け、心のリフレッシュをもたらすと考えられています。
例えば以下のような研究結果があります。
- 2018年に行われた研究では、ASMRを経験する人々は、心拍数が平均で約3.14拍/分低下することが報告されました。これはリラックス効果を示す指標として注目されています。
- 一部の人々は、ASMRの動画や音声を聞くことで睡眠の質が向上すると報告しています。
ASMRの睡眠改善効果
ASMRは多くの人々に睡眠改善効果をもたらすとされ、その背後にはリラックス効果や心拍数の低下が関係していると考えられています。
理由や根拠
- 神経学的要因: ASMRの刺激により、脳のリラックスに関連する領域が活性化することが示されています。このリラックス効果が睡眠の質を高めると考えられています。
- 生物学的要因: ASMRの体験者の中には、心拍数が低下することを報告する人々がいます。心拍数の低下は、リラックス状態を示す指標とされ、これが深い睡眠を助ける可能性があります。
- 心理学的要因: ASMRの音や映像は、日常のストレスや雑念を忘れさせ、心を落ち着かせる効果があるとされます。これが睡眠導入に役立つと考えられています。
例えば以下のような研究結果があります。
- 一部のASMRのリスナーは、特定のASMRの音や動画を聞くことで、入眠しやすくなったり、夜中に目を覚ます回数が減少したと報告しています。
- ある調査によれば、ASMRの動画を定期的に視聴する人の中で、約80%が「睡眠の質が向上した」と感じていると答えています。
ASMRの集中力向上効果
ASMRは一部の人々に集中力向上効果をもたらすとされ、その背後には脳の活性化やリラックス効果が関係していると考えられています。
- 神経学的要因: ASMRの刺激は、脳の特定の領域を活性化させることが示唆されています。特に前頭前野は注意や集中に関与する部位であり、この部位の活性化は集中力の向上に寄与すると考えられています。
- 生物学的要因: リラックスホルモンとして知られるオキシトシンの分泌が促されることで、集中力や気分の向上が報告される場合があります。
- 心理学的要因: ASMRによるリラックス効果は、不要な雑念やストレスを軽減し、タスクに集中する環境を作り出すとされています。
例えば以下のような研究結果があります。
- 学生や働く大人の中には、作業や学習の際の背景音としてASMRの動画や音声を流し、これにより集中力が向上したと感じる人々がいます。
- 一部のクリエイターや研究者は、ASMRを使用して創造的な仕事の品質や生産性が向上したと報告しています。
このようにASMRは、神経学的、生物学的、心理学的な要因を通じて、一部の人々に集中力向上効果をもたらすと考えられています。
この効果は、リラックス状態を深めることで注意力を集めやすくするため、学習や作業の際に有益なツールとして利用されています。
まとめ|ASMRが気持ち悪いのはなぜ?咀嚼音に対する不快感とは?
いかがでしたでしょうか。本記事ではASMRや咀嚼音について、個人の感じ方含めた内容をお伝えしました。
ASMRや咀嚼音に限らず、多くの物事で個人の捉え方は様々ありますので、どちらが良い悪いということではなく、価値観の一つとして捉えるとよいのではないでしょうか。