電力切り替えプラットフォーム、エネルギーテック企業ENECHANGE(エネチェンジ)を徹底解剖

enechange(エネチェンジ)

2016年4月1日に電力の全面自由化が開始されたのに伴い、多数の企業が電力小売事業に参入している。個人的にも電力会社を切り替えたこともあり、最近では様々な会社のCMなども目にする機会も多く、関心が高まっているのではないだろうか。

そこで今回は個別の電力会社ではなく、中立な立場でエネルギー業界のイノベショーンに挑んでいる企業を紹介したい。国内最大級の電気料金比較メディアを運営しているENECHANGE(エネチェンジ)という会社のビジネスモデルや競合優位性などについて読み解いていきたい。

ENECHANGE(エネチェンジ)とは

エネチェンジは、2つのBtoBtoC型SaaSモデルの事業を展開している。一つは消費者向けの電力・ガス切替サービス、もう一つは電力・ガス会社向けのクラウド型DXサービスの提供だ。

現代表の城口洋平氏が、理系最高峰であるケンブリッジ大学留学中に、自身の専門領域である統計学・データ解析との接点である電力データAI解析を学び、電力データの産学連携研究機関「ケンブリッジ・エナジー・データ・ラボ」を設立したのが始まりだ。その城口氏と現COOの有田氏2名の代表取締役は、ともにエンジニア経験があり、同社全体の社員構成比率も約50%がエンジニアという組織だ。

2015年4月の設立から5年目となる2020年12月23日に東証マザーズに上場(IPO)。業績も右肩上がりに推移しており、後ほど詳しくみていくが直近の成績は売上高は約1.7億(前期比+41%)、営業利益5,300万円(黒字転換)という数値だ。

直近の業績

参照元:2020年12月期決算説明資料

売上高は約17億(前期比+41%)、前年同期比で四半期売上高は約4.6億(+64%)の増加で、高い成長率で推移している。セグメント別売上高としては、プラットフォーム事業が電力切替需要の増加、一時報酬単価の上昇を背景に約10億(前期比+58%)。

データ事業が大手電力・新電力への主力プロダクトの導入により顧客数が増加し、約7億(前期比+23%)の実績である。

参照元:2020年12月期決算説明資料

同社の収益モデルとしてストック型の切替報酬とその他報酬の2つがある。ストック型報酬は、プラットフォームサービス上で切替を実施したユーザーが、電力・ガス会社に対して支払う毎月の電力代・ガス代に、あらかじめ定められた料率を乗じた金額を、切替以降原則として毎月継続的に受領する仕組みである。

ストック型収益は、約9億(前期比+33%、前年同期比+27%)の成長。着実にストック型収益が積み上がっており、収益性が向上している。

コスト構造

参照元:2020年12月期決算説明資料

前年対比で大きく変化のある項目として、広告宣伝費が約30%程度まで低減していることと、販売手数料などが約3倍になっている部分だ。販売手数料に関しては、以下にある提携パートナー経由での切替件数に拡大が要因だ。全体構造としてやはり開発のためのエンジニアの人件費が主なコストとなっている。

同社はパートーナー提携に注力しており、パートナー社数は今期290社(前期比+42%増)でパートナー経由の契約件数は約5.2万件(前期比+81%増)である。

ビジネスモデルと具体的な事業内容

参照元:新規上場申請のための有価証券報告書

同社の2つの事業を合わせた全体の事業系統図としては上の図の通りで、両事業とも電力・ガス会社を顧客としており、バーティカルに事業を展開している。以下、それぞれの事業について具体的にみていきたい。

プラットフォーム事業

プラットフォーム事業では、家庭向けに電力・ガス切替のサービス提供を行っている「エネチェンジ」と法人向けに電力・ガス切替サービス提供を行っている「エネチェンジBizを運営している。

セグメント別ではプラットフォーム事業が売上の58%を占めている。月間UU数220万人、提携電力・ガス会社数52社によるプラットフォームであり、直近は電力自由化の浸透やコロナ禍でのテレワークの促進を背景に更に成長を続けている。

前半でお伝えしたように、同社は電力・ガス契約の切替後に、切替先の提携企業から切替時の一時報酬と、継続報酬を受領する収益構造となっている(ストック型収益比率43%)。その他報酬として、メディアとしての「エネチェンジ」及び「エネチェンジBiz」における電力・ガス会社からの広告掲載依頼・配信活動に伴い受領する広告収入等がある。

同社はオンライン・オフラインの提携パートナー数を拡大させており、それに伴いパートナー経由での切替件数も大幅に増加している。

データ事業

こちらの事業では、電力・ガス業界向けに企業のデジタル化、DX化を手がけているサービスを展開している。かなりニッチな領域でイメージがしづらい内容ではあるが、概要だけでもお伝えできればと思う。まずサービスとしてはEMAP、SMAP、JEFという3つを展開している。

これらは、「エネチェンジ」「エネチェンジBiz」によって蓄積される大量のユーザーデータを活用した「EMAP」、スマートメーターデータの解析を軸とした「SMAP」、再生可能エネルギー発電所のデータ活用の「JEF」とそれぞれ異なる特徴を有している。

収益モデルとしては、いずれも電力・ガス会社を中心とするサービス提供先の企業から、サービス提供の対価として一定の報酬を受領している仕組みだ。直接的な対象顧客は電力・ガス会社が中心だが、利用者数に応じた従量課金体系を一部採用しており、電力・ガスを利用するエンドユーザーを間接的なサービス対象顧客としている点が特徴である。

特徴と優位性

ここでは、同社の特徴と強みに関してもう少し深くみていきたい。

専門性の高い事業領域

同社2つの事業のうち、プラットフォーム事業については類似サービスを展開している同業もあるが、同社の場合はデータ事業での電力・ガス業界との結びつきが非常に強い。

そのため、今後の国のエネルギー政策が進むにつれて、一貫した事業展開を行っていることや、創業メンバー含めた人材が業界に非常に精通しており、研究者レベルであることが挙げられであろう。

今後も事業規模拡大で得られる膨大なデータとそれを利用することが可能な国の政策とも合間って、城口氏がこれまでやってきたデータ分析の専門性がより発揮され、更に競合優位性が高まると考えられる。

マーケット環境における追い風

以前よりグローバルで、脱炭素社会、クリーン・エネルギー開発などの実現を目指す動きがあったが、直近、菅政権の誕生以降、日本政府のそのような実現に向けた動きは加速し、2020年12月25日の「グリーン成長戦略」の公表によりその道筋が示された。

そのような環境下での同社への影響はプラス要素が大きく、今後のますます同社サービスニーズは増えていくだろう。

日本のエネルギー関連制度改革は2016年の電力自由化から2024年の容量市場開始まで9年に及ぶ大変革の過渡期であり、同社はまさにそのど真ん中で事業を展開してきた。これまでは同社プラットフォーム事業の面でプラスの影響が大きかったが、今後はデータ事業のプラス面が大きいため、同社のセグメント別の売り上げにも注目していきたい。

収益の安定性

冒頭よりお伝えしているように、同社のビジネスモデルはストック型の収益モデルであり、電気・ガスといった生活のインフラであもるため、その解約リスクも極めて小さいため、安定的な収益が期待できる。

現状、月間平均解約率は約1%程で推移しているが、今後より業界との結びつきが強まれば強まるほど、同社のサービスがなくてはならない存在になり、解約率も低減する方向になるだろう。

口コミ・評判(ユーザーの声)

電気は今月から楽天でんき!期間固定の楽天ポイントを消化できると聞いたので。ガスはエネチェンジってサイトで切替ボーナス+料金シミュが一番よかったレモンガスです。
twitter – @ematty_investor

電気契約きまった〜私の地域と希望するプランの中では一番安いエルピオ電気にしました。エネチェンジにして、10ヶ月後に2.1万円キャッシュバック+キャンペンコード使用(R3.2 現時点コードは391 電話でも教えてもらえる)しました。ひと段落twitter – @EEOxTLMOhhD8E2v

電気とガス代の節約は、契約先の切り替えを検討しよう!エネチェンジhttps://enechange.jp16年4月電力の自由化が始まって、17年4月には電力に続いてガスも自由化したよ。お得なプランでは年間で1万円以上安くなることも!twitter – @karireru

今後の成長戦略

直近は高い売上高成長率の継続を目標とし、毎年30%以上の売上高成長、2027年には売上高100億円を目指す計画である。その目標を達成した暁には、プライム市場への上場も目指す方針である。

実際に、電力自由化の先進国であるイギリス(1999年に電力自由化)では、オンライン比較サイトの利用率が推定約60%に達している。

切替シェア2位で同社と同様の事業を展開する大手価格比較サイトMSM社は、2019年度にエネルギー切替関連の推定売上72億円(営業利益率30%程度推定)、切替における推定シェアは15.9%となっている。

そのため、同社としては似たような流れが日本にも起こり、MSM社と同様の事業規模には直近でいくであろう想定である。

実際にコロナ禍におけるテレワークにより自宅での仕事や滞在時間が増えたこともあり、上の図のように電力の使用量はわかりやすく増えており、それをきっかけに電力の見直しを考える人も多いようである。

総括

個人的にも電力の切り替えを実施に行ったこともあり、特に自宅での滞在時間が長くなった方には現状診断、切り替えた場合のシミュレーションを一度はされることはおすすめしたい。

住んでいる地域や使用電力量など個人個人の状況で内容は異なるものの、切替の各種キャッシュバックもあるため、悪くない取り組みだろう。今の日本の流れやグローバルな視点からも今後更にクリーン・エネルギーは拡大すると思うため、環境的にも追い風である同社の今後の事業拡大にも引き続き注目したい。